健康と笑いとマンガ家とわたしたち・・吾妻ひでお『失踪日記』『アル中病棟』
このところブログを更新することができませんでした。
ほとんどなにも頭に浮かばなくて、小説を読んでも長続きせず、昨夜はマンガを一話読んだだけでくたびれるというありさまでした。
そのマンガが吾妻ひでおさんの『失踪日記』で、あんまりおいしそうにお酒を描かれるので(100円のワンパックみたいでしたが)、つい僕も蒸し暑い夜中、ひとり台所で一杯やりました。
なんだかなぁと思いますが、今日あらためて『失踪日記』のつづきを読みました。
吾妻さんの作品では他に『アル中病棟』を読んだことがあります。
この2作では、アルコール依存症とか失踪とかホームレスとか肉体労働とか風俗とか詐欺とかたかりとか社会的にネガティブとされることが出てきます。
しかし『アル中病棟』の巻末対談でとり・みきさんが指摘されているように、作品の中ですべてが「等価」に描かれているせいなのか、読むと不思議と元気になります。
女性はかわいらしい美少女キャラにデフォルメされていて、それが夜の街とか工事現場に唐突に、頻繁に現れるので、思わず吹き出します。
そして問題は「酒無しでこの辛い現実に、どうやって耐えていくんだ?」という『アル中病棟』の帯にもなった名セリフに現れていますが、この2作にはこの問いに対するヒントがあると思います。
1)マンガ家には健康が必要である。
ひとつは、健康だと思います。
『失踪日記』で吾妻さんは肉体労働の体験をマンガにされていますが、やっぱり半年も続けると身体が鍛えられるみたいです。
マッチョになっておられました。
それまでマンガの締め切りに追われる生活をされていたようですが、想像するにあまり体を動かしたりされていなかったのではないでしょうか。
文章を書くのは肉体労働だという村上春樹さんの格言もありますが、吾妻さんも筋肉がついて肉体労働を辞めて、マンガ描くかとなったのではないでしょうか。
2)吾妻さんはギャグマンガ家である。
先ほど吾妻さんの描く世界は「等価」だと紹介しましたが、「等価」の落とし穴というか、必然というか、「好きなだけ酒飲んで死んでもしょうがない」のも「等価」の世界なのです。
割と残酷な目線なのですが、作品はやさしくて、おかしいです。
破滅型のマンガにならないのは、吾妻さんの中に「しょうがない」ですまされない何かがあるからだと思います。
そもそも吾妻さんが死んじゃったら読めなかったこともあるのですが、その何かはたぶん吾妻さんの中に、プロのギャグマンガ家という意識があったということじゃないかと推測します。
読者に笑ってもらいたい。
そういう考えが無意識レベルの奥深くまで浸透していたのだろうと思います。
そして、わたしたちが吾妻さんのこの2作から学ぶことができることは、
1)健康は何をするにしても基本であるということ
2)他人のために自分は何ができるかということ
なのではないかと思いました。