失われた時間を求めて・・竹内まりや「駅」
竹内まりやさんの「駅」は、酒を飲みながら繰り返し聴いていると、人目もはばからず号泣してしまう恐ろしい曲です。
なんでそんなことになってしまうかなぁと折にふれて考えてきました。
歌詞をつらつら追いかけてみるに、電車の中で元彼をみつけて女性がもの思いにふけるという日常の一コマみたいな内容です。
「駅」は失われてしまった何かをライトモチーフにしているのだと思います。
失われてしまった何かというのは、たぶん時間です。
だから普遍的で、いろんな人の心に響くのだろうと思います。
昔、糸井重里さんがラジオで、歌詞にある「2年の時が」という半端な時間が、元彼のことを完全に忘れた訳でもなく、いわば生煮えの感情みたいなもの表現していてすごいとおっしゃっておられました。
ちなみに「駅」のモデルは、東急東横線の渋谷駅だそうで、僕にとってはいろんな意味で懐かしい場所です。
もう5年は経っています。
それなのに、サビに「懐かしさの一歩手前で こみあげる苦い思い出に ことばがとても見つからないわ」とあって、この辺りからぼくの心はぐっときはじめます。
一つの仮説として、繰り返し聴いて自分の心の地層を掘っていくうちに「懐かしさの一歩手前に」戻るのではないかと思います。
そして一つの世界になっている歌詞をばらばらにして、文脈を差し替え、「懐かしさの一歩手前」とか「こみあげる苦い思い出」とかのことばに自己を投影していくのです。
誰しも苦い思い出の一つや二つはありますから。
そのようにして曲と自分が最高潮に盛り上がったとき、「思わず涙あふれてきそう」という最後のキメ技みたいな歌詞に誘われて、こちらも涙するのです。
まるで竹内まりやさんに、ここで泣きなさいよとスイッチを入れられたロボットみたいに。
- アーティスト: 竹内まりや
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- 発売日: 2008/10/01
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