人にやさしく5・・キセキのような回復と風呂
月曜日になって病院が日常に戻ると、治療も本格的になります。
治療内容まではあまり覚えていませんが、点滴が中心でした。
それと呼応するかのように、少しずつ体が動き始めます。
まず首が動くようになったかと思います。
「えっ、ここまで来てたの?というか、動いてなかったのか」とびっくりした記憶があります。
それから腰が浮くようになりました。
オムツをしてウンチをするとき、大変楽になりました。
寝たきりでウンチをするときは、腰を浮かして力を入れるのがコツなのです。
そして火曜日になると、担当医から風呂の許可が出ます。
出雲市民病院では、火曜日と金曜日に、入院患者は風呂に入れるそうです。
金曜日に入院してから、汗やいろんなモノでドロドロになっていたので、大変ありがたかったです。
車付きの担架に乗せられて浴室につくと、木でできた平均台みたいなものに移されました。
これに横になると、看護師さんに着ていたパジャマを脱がされて全裸になります。
こうなるともう恥ずかしいものはないですね(笑)
オムツどころではないです。
看護師さんふたりに運ばれて、ゴロゴロと浴室の中に入っていきます。
プールみたいな風呂から、大きな風呂桶で、ザバーンと体にお湯を打ってもらいます。
それから頭を洗ってもらい、髭を剃ってもらいます。
体もくまなく洗ってもらい、再びザバーン、ザバーンとお湯を打ってもらって終了。
浴室の中から出ると、髪を乾かしてもらって、体を拭いてもらいます。
さすがプロというか、ものすごく手際がいいと思いました。
そしてぼくは日を追うごとに回復していきます。
手が動くようになり、足も膝を立てることができるようになります。
四肢麻痺の寝たきりになるかもしれないという地点からみると、キセキみたいです。
看護師Aさんには「顔つきが少し柔らかくなりましたね」と言われました。
仕事柄、いろんな所をよく観察しておられるのだと思います。
金曜日には再び風呂に入れてもらいます。
看護師さんたちには「よかったねぇ、動けるようになって」とか、「わたしの顔、覚えてくれた?」とか口々に言われます。
火曜日の風呂の時は、まだ看護師さんのことばまで聞き取る余裕がなかったのです。
「強くならないといけんよ」と言われたのが妙に印象に残っています。
浴室の中では、「動けるようになったんだったら、あそこぐらいは自分で洗って。わたしにだって旦那がいるんだから」とか、なんだかエッチな会話まで交わされたりします。
ぼくの回復をとても喜んでくれているようでした。
もともとは大酒が原因で、まるで罰のように地獄を味わったあと、ここまで回復すると、ホントにキセキみたいだし、ものすごくいい薬になります。