獣道

ようやく梅雨が明けそうになると、仕舞ってあったアサヒのクロスバイクを出してサイクリングに出かけた。

信販売で買った自転車で、整備にやや不安がある。

前輪のブレーキを固定するねじの締め忘れがあって、ブレーキがぐらぐらしていた。

フレームの実物を見ずに注文したので、自分の身体に比べて少し大きい気もする。

タイヤはママチャリ並みに太いから、耐久性はあるかもしれないけど、スピードは出ない。

クロスバイクといえるか微妙なところだけど、ときどき街中を走るには充分だろう。

 

大きな街道は、連休中ということもあって自動車が多かった。

危険を避けるため、僕は袋川沿いのサイクリングロードを走った。

昔、散歩をしていて1メートル以上あるアオダイショウと出くわした道だ。

アオダイショウを見かけてから、僕はその道に寄りつかなくなったわけだけど、自転車なら大丈夫かなと思ったのだ。

 

これは不思議なことだけど、大人になってからの方が怖いものが増えた気がする。

蛇もそうだけど、蜂とか蛾の幼虫のような昆虫からも逃げ回っている。

それどころか、魚に触るのさえ億劫になった。

確かに蜂は危険といえば危険だし、蛾の幼虫はグロテスクである。

だけど、魚なんか子供の頃は手づかみで嬉々として取っていたじゃないか思う。

 

大人になると想像力の働きが増す。

海から引き上げられて水槽に入れられた松葉ガニと、正面からにらめっこしたことがあるが、その時、僕はいたたまれない気持ちになった。

高価という意味ではない。

この松葉ガニはいつでも水槽から引き上げられうるし、半分死んでいるようなものなのだけど、松葉ガニはその事を知っているのだろうかと思ったのだ。

 

あるいは、松葉ガニを水槽から出して、水から引き離すところを想像した。

こいつは息ができなくて苦しいに違いない。

僕は息ができなくて死にかけたことはないけど、それがどれほど苦しいかを想像して、やりきれない気持ちになった。

 

 

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