アルコール依存症からみたコンビニ人間・・村田沙耶香『コンビニ人間』
読みながらふと何度か思ったのが、主人公の古倉恵子は指示待ち人間なのか?ということだった。
他人のことをよく観察して、論理的思考もできるのだけど、アルバイトのコンビニに依存気味で、自分の中の垂直方向に秩序立った考え方が乏しい気がした。
食事も質素で、なんとなく自分を殺して生きている感じがする。
『コンビニ人間』の12ページに書いてあった。
「皆の真似をするか、誰かの指示に従うか、どちらかにして、自分から動くのは一切やめた。
必要なこと以外の言葉は喋らず、自分から行動しないようになった私を見て、大人はほっとしたようだった。」
これだ。
小学校の低学年で自分から動くのをやめると決めたのだ。
これはトラウマになるんじゃないだろうか。
ぼくにも少しだけ似た経験がある。
すでに30歳だったけど、酒に頼ると決めたことがあった。
理不尽な現実に対して、ぼくは無力でどうすることも出来なかった。
よし、それなら酒に逃げてやろうと決めた。
その結果は、避けがたくアルコール依存症になる。
ネタバレになるのだけど、あのラストを読むと、古倉恵子もコンビニ依存症?のような気がする。
断酒のときのスリップみたいだ。
例えば、こんなセリフ。
「気がついたんです。私は人間である以上にコンビニ店員なんです。人間としていびつでも、たとえ食べて行けなくてのたれ死んでも、そのことから逃れられないんです。私の細胞全部が、コンビニのために存在しているんです」(P.149)
もちろん病気とは違うし、ヒモの言いなりになっていいのかという見逃せない論点はあるけど、思考停止気味で、ちょっと心配になった。