シャーロック・ホームズのスクラップブック・・ジェームス・w・ヤング『アイデアのつくり方』
ジェームス・w・ヤング(1886〜1973)は、アメリカの広告代理業で仕事をした人である。
訳者によると、アメリカの広告史に大きな足跡を残した人だそうである。
そのヤングが、アイデアについて残したのが『アイデアのつくり方』で、ビジネス書の古典的名著といわれている。
Amazonもおすすめしているみたいだ。
- 作者: ジェームス W.ヤング,竹内均,今井茂雄
- 出版社/メーカー: CCCメディアハウス
- 発売日: 1988/04/08
- メディア: 単行本
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薄すぎるぐらいのこの本を、さらに簡単に紹介してみたい。
詳しくは本書を直接手にとって読んでいただきたい。
基本的な考え方はとてもシンプルで、アイデアを出すにも、原理があり方法があるということである。
それでは早速、その原理と方法を紹介しよう。
アイデアをつくる原理は二つある。
第一の原理は、アイデアは既存の要素の新しい組み合わせであるということだ。
かけ合わせるということである。
第二の原理は、事物の間に関連性を見つけ出すということだ。
一見、無関係に見えるものに関係を見つけるのだ。
この二つの原理を踏まえたうえで、五つの技術の段階がある。
一定の順序で通りぬけるというのがポイントだ。
第一の段階は、資料の収集である。
資料には二種類あって、特殊資料と一般資料に分けられる。
特殊資料とは、ヤングの畑である広告界では、製品と売りたいと想定する人々についての資料である。
ヤングはこの特殊資料の収集について、モーパッサンが小説の勉強法としてフローベールからすすめられた方法と似ているという。
小説を書きたければ、
パリの街頭へ出てゆきたまえ
といい、
あるタクシー運転手が、この世界中の他のどの運転手とも違った一人の独自の人物に見えるようになるまで、この男を研究しなければならない。
のだという。
一次資料にあたるということだ。
もう一つの一般資料は、なんでもいいのだが、継続的に収集し続けなければならない。
なぜなら、アイデアは特殊知識と一般知識との新しい組み合わせから生まれるからだ。
第二の段階は、資料の咀嚼である。
一つの事実を、様々な角度から眺め、その意味を探し求める。
二つの事実を並べてみて、どうすればこの二つがかみ合うかを調べる。
探しているのは関係だ。
第三の段階は、できるだけ完全にこの問題を心の外に放り出してしまうことである。
この段階が、決定的で不可欠な一つの段階であるということを体得しなければならない。
できることは、問題を忘れて、自分の想像力や感情を刺激する音楽や映画に触れることぐらいである。
第四の段階は、アイデアの訪れである。
それはどこでやってくるか分からない。
トイレの時かもしれないし、寝て起きた直後かもしれない。
第五の段階は、翌朝の冷えびえとした灰色の夜明けのようなものである。
可愛いアイデアをこの現実の世に連れ出さなければならない。
子供が思っていたようなすばらしい子供ではまるでないことに気づくのが常である。
現実に適合させるためには、忍耐づよく種々たくさんな手を加える必要がある。
忍耐や実際性が必要になるのだ。
以上である。
五つの技術の中で、特に自覚的にできるのが、資料の収集だろう。
ヤングはこの本の中で、シャーロック・ホームズのスクラップブックを例としてあげている。
ぼくはシャーロック・ホームズをそんなに読んだことがないので、詳しくは知らないのだけど、ホームズはスクラップブックに個々雑多な資料を集めて、様々な角度から検討を加えて暇つぶしをするのだそうだ。
この本のキモをイメージさせるシンボリックな存在が、シャーロック・ホームズのスクラップブックなのだ。
さて、翻って我が内なる現代のホームズは、どうするべきだろう。
ここでは、ごく個人的な情報の保存方法を紹介して終わりたい。
ぼくは、ネット上のデジタル情報は、全てEvernoteに保存するようにした。
なので、年間3,100円を払ってプレミアムに登録している。
Pocketもサブ的に使うこともあるが、基本、Evernoteに一本化である。
ときどき保存にもたついてイラつくことがあるけど、いいんじゃないかと思う。
選んだ理由は特別ない。
そして、ふだん思いついたこと気になったことなどは、全て、ほぼ日手帳にメモするようにしている。
使い始めてから10年以上経つヘビーユーザーだが、途中、浮気をしたことがないこともない。
でも結局、ほぼ日手帳に戻ってきた。
折しも、先日の9月1日から、2019年の手帳が発売になった。
試しに、見に行かれてはいかがだろう。