それでも「LIFE」なのさ・・小沢健二『LIFE』
しばらく小沢健二の『LIFE』を聴き続けた。
今さら言うのも気恥ずかしい気がするのだけど、とてもいいアルバムだと思う。
渋谷系は敷居が高い感じがするし、小沢健二という人には熱心なフォロワーがいることなどもあって、僕みたいな無教養な人間には縁のないものだと思っていた。
何回か聴いて、すぐにいいということは分かった。
ところが、まっすぐに音楽に向かえないというか、予備知識というか、一種の偏見が音楽を聴くことのじゃまをする。
素直に聴けない。
例えばこんなのカラオケみたいじゃないかとか思ってしまう。
後付けで、当時の音楽シーンに対する批評性みたいなものかと勘ぐったりする。
聴くものを屈託させる何かが小沢健二という存在にはある。
何しろ王子様なわけだし。
例の元ネタ探しも、音楽の素人である僕にもいくつか推測できた。
オープニングの「愛し愛されて生きるのさ」は、ゴダイゴの「銀河鉄道999」に似ている。
お、俺でもわかった。
小沢健二は音楽のランキング番組をよく見ていたらしく、「今夜はブギー・バック」の歌詞の中にも「心のベストテン」というフレーズが出てくる。
なるほど少し歩み寄ってくれたのだな(笑)
個人的には「〜なのさ」という助詞の「さ」の使い方が意識的だと思う。
松本隆の「〜なんです」を意識したのだろうか。
『LIFE』の中には、小沢健二のポップアイコンとしての自覚のようなものが流し込まれているはずだ。
ポップアイコンを演じるのはとてもタフな仕事なのだろう。
それだけに『LIFE』というアルバムのタイトルには、いくらかビターなテイストが漂う。
もしかして「人生」と訳すのか?
汗臭さや泥臭さとは全く縁のなさそうなオザケンが?
「今夜はブギー・バック」のうだるような歌声はそのせいか。
個人的には大好きなアルバムだけど、時代の爪痕のせいか、昼間車の中で聴くには、ちょっと気恥ずかしかったりする。
それぐらい弾んでいるし、ウキウキしてくる。
僕は深夜にひとりで聴いていたりする。
つくづくいいアルバムだと思う。
- アーティスト: 小沢健二,スチャダラパー,服部隆之
- 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
- 発売日: 1994/08/31
- メディア: CD
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