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たー坊の日記

読むこと、聞くこと、書くこと、世界の探求

峠のモーツァルト ピアノ・ソナタ第8番

モーツァルトのピアノ・ソナタ第8番を聴いていると、山の奥深くにある峠を走る車のことを思い出す。

ぐねぐね曲がりくねった急カーブだらけの道を走ると、車の中は遠心力で人も物も外に投げ出されそうになる。

次のカーブが来そうになると、無意識のうちに身を固くして構える。

カーブでは遠心力の反対方向に体を預けて、なんとか体の平衡状態を維持しようとする。

急勾配の上り下りもあるし、窓の外を見れば深い谷底が口を開けている。

峠を抜けるまで振り回されっぱなしだが、無事抜けるとほっとする。

 

モーツァルトのピアノ・ソナタ第8番でそんな激しくドライブする感覚を味わうためには、どうしてもタタタタタンでなくてはならない。

ポロンポロンポロンでは駄目なのだ。

そのことを知ったのが、グールドの演奏だった。

速いテンポで進みながら、急に角度を変え、アップダウンしながら着地する。

第一楽章の印象はそんな感じだが、中でも最難関はグールドの演奏で1分20秒ぐらいの展開部から始まる。

左右に振られ、徐々に上っていきながら、頂点に達すると、ガクッ、ガクッ、ガクンと一気にエアポケットみたいに足下が崩れていく感覚は、一度聴くと癖になる。

 

このピアノ・ソナタ第8番が書かれた年に、モーツァルトは母親の死と恋人との別れを経験している。

あるいは、モーツァルトも馬車を飛ばして、母親の元に向かったということはないだろうか。

ないか。

 

 

Glenn Gould Plays Mozart: the Piano Sona

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