目のくらむ映画をみているような・・ラヴェル「ピアノ協奏曲」
パシッと一発、鞭を入れて曲が始まる。
あるいは映画のカチンコのような音だといってもいい。
この音を聴いただけで、「ラヴェルかっこいい!」と思い、曲に引き込まれる。
ラヴェルは19世紀から20世紀にかけて活躍したフランスの作曲家である。
作風は一般的にドビュッシーとともに印象主義と呼ばれているが、実はベートーヴェンやモーツァルトといった古典主義的な資質の人だった。
ドビュッシーと比較しても、ラヴェルの場合、旋律は明確であり、不協和音は鋭く、構成は堅固だといわれる。
(ドビュッシーはその反対。)
印象主義というのは、絵画の分野でクロード・モネが輪郭のはっきりしない絵を描いたのが始まりで、それまでの絵画は輪郭線をはっきり描くのが主流だったそうだ。
なので、特徴からみてラヴェルは古典主義的だといわれる。
僕が聴いた印象では、ドビュッシーの曲は旋律が不明確なせいか、記憶するのが難しい。
なんとなくふわふわしてとりとめがない。
そういうところはラヴェルにもある。
一方でベートーヴェンやモーツァルトのようなきっちりした構成を形成していることもあってか、曲を分節化して記憶に留めやすいところもある。
簡単に言うと、曲の一部を鼻歌で歌ったりしやすいということだ。
ラヴェルは管弦楽法の大家で、精緻な書法を駆使し、モダンな曲をものし、演奏家はしばしば超絶技巧を要求される。
「オーケストラの魔術師」と呼ばれるが、このピアノ協奏曲も最高の仕上がり具合になっている。
第一楽章、パシッと鞭を入れると、印象派の絵画の小川のせせらぎのようなピアノの伴奏に、フルートの第一主題が聴こえてくる。
印象派的な、さてこれからどこへ行こうかといった感じがするが、そこはソナタ形式だから安心していい。
必ず旋律が戻ってきて繰り返されるからだ。
途中、不協和音だろうか、鋭い対立を経たりしながら、終結部に戻ってくる第一主題の旋律は、まるで映画のような彩色が幾重にも施されている。
ラヴェル自身が「モーツァルトとサン=サーンスの精神に則って作曲した」と語っているのだから間違いないだろう。
ロンド形式とは、主題が何度も繰り返し現れる形式のことで、ピアノ協奏曲の第三楽章によく使われる。
ベートーヴェンのピアノ協奏曲もロンド形式だけど、僕はこの曲を聴いていて第二楽章が終わると、なぜかモーツァルトのピアノ協奏曲第20番の第三楽章を思い出した。
関係があるのかどうかは知らない。
非常にスピーディーな楽章で、途中鞭が入り、ドンッと緞帳が降りておしまい。
モダンでかっこいいです。
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